アカシア便り82          '98-10-05   1/3

 今年の国慶節は10月1日から5日までの5連休であった。
 祝祭日の少ない中国では春節(旧正月なので一定していない、大体1月下旬から2月
20日ごろにかけて)と5月1日のメーデー(国際労働節)と10月1日の国慶節が
一斉公休日となる3大祝祭日である。
 その外に、植樹節、婦人節、児童節、教師節、建軍節、仲秋節、老人節のような祝日は
あるが、一斉休日とはならない。
 3大祝祭日の1週間前には必ず政府からの通達が出て、公共機関の一斉休暇予定が発
表される。公共機関の中には学校も含まれるので、各企業もそれにならって親子がとも
に休暇をとって家族団らんの連休を過ごすのである。
 今年の国慶節は10月1日から4日まで土、日を含めて4連休ということが政府発表
として新聞に載った。各企業はこれにならって按配しなさいという趣旨の発表である。
 私の会社(DHC)には遠隔地からの社員が半分以上いるので、久しぶりに故郷に帰
りたい人が多い。そのような人のために、政府発表より1日多く、振替休日を1日いれ
て10月5日を休日に指定し、5連休とした。これは、7月に仕事の都合で会社指示に
よって日曜出勤したものの振り替えである。
 故郷に帰る人は、仕事の段取りを考えて前日の午後から半日休暇をとって、にこにこ
しながら帰っていく人もいるし、5時に一日の仕事を終えて帰る人もいる。汽車の時間
によっては翌日でなければ帰れない人もいる。
 5連休では短かすぎて、夜行列車でなければ帰れないような遠隔地の人は帰るに帰れな
い。このような人は年1回の春節休みが待ち遠しい。3大祝祭日でも最も盛大に祝う春節
休みは、前後の土、日を振替出勤にして10日間の連休にするのがならわしである。なか
には、振替休暇をとって2週間ぐらい休む人もいて日本とあまり変わらない。

 DHCの社員の仕事振りは、日本の高度成長期のころを思わせるほどの熱気がある。
会社の福利厚生も秀れているし、社員も優秀である。
 一般に中国では、特に国営企業ではあまり働かないし、窓口業務の態度もつっけんど
んだ、ということが問題になっていた。たしかに、4年前に大連に赴任した時には、銀
行や郵便局では昼休みが11:30〜13:30と2時間もあってお客さま不在を思わ
せるような制度だった。しかし、改革開放が進み国際化が進むと、自分の都合だけでは
やっていけなくなる。今では、公共性の強い銀行や郵便局で昼休みで業務がストップす
る不自由は経験しなくなった。ただ一つ、いまだにこの悪弊を引きずっているのが身近
かにあって不自由することがある。それは日本国領事館大連事務所で、旧態依然とした
制度を忠実に守っていて、誰も怪しまないのだろうか、と気にかかる。

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 DHCはDICと言われた『大連市信息中心』の殻を破って、民間企業の
『大連華信計算機技術有限公司』に変身し、大きく飛躍しようとしている。
 国内業務では、日本の大手企業と提携して郵電局のグリーンカードシステムに取り組
んでいるし、海外業務では常時10指以上のプロジェクトを推進している。そして、こ
の8月にはソフトウェアの品質管理に関する国際標準ISO9001の認証を取得した。
 社員はやる気満々だし、会社も若い。2か月に1回開かれるNECとの定例会議では
急速に伸びている会社の常として、管理体制の強化に取り組むよう指摘された。

 会社の管理体制の強化というのは、人事と組織に集約される。
 大学新卒も中途入社者も急ピッチで採用していると、1つの単位としてコントロール
できる人数を考えなければならなくなる。いわゆる、スパン・オブ・コントロールをど
うするか、それに管理職の適格性と配置が問題になってくる。採用は人数を揃えるだけ
ではなく、質も揃えなければならない。
 技術者の採用は、特に大学新卒の採用はソフトウェア開発への適性を採用前に探って
おかないと、とんだババを引き当てることになる。新卒採用の場合は、大きなコストと
リスクを負うことになる。採用された本人にとって、適性のない仕事をしなければなら
ないのは不幸だし、惨めである。会社にとっては育成しても効果が上がらないばかりか、
生産環境に与える悪影響は見逃すことができないものとなる。従って、新卒者採用基準
を明確にしなければならない。
 さらに、このような若い会社では入社後2〜3年もすれば、管理職候補として引き上
げることが珍しくない。この時、大事なのは管理職適性基準を明確にしておかないと、
同時入社者の間に不公平感が芽生えて、あたら有能な人材を失うことになりかねない。
この基準は全社員に公表し、やる気を起こさせる効果を引き出すものでなければならな
い。これは経営ノウハウの一つである。
 私は4月に『経営管理について』と題してプロジェクトマネージャー以上の20数人
を対象に話をしたが、Vラインとスタッフの権限と責任Vの話は本当に分かってもらえ
ただろうか? 私は日常、会社の中で若い技術者と一緒に仕事をしていて感じたことを
率直に述べているが、まじめに対応してくれたものとそうでないものがある。人によっ
て受け止め方が違うのは当然として、会社の経営幹部がどのように私を受け止めてくれ
ているのか、甚だ『認知されていないナ!』と思うことが時にある。

 最近はよく、ソフトウェアの開発にはMRM(Machine Readable Material)とドキュ
メントが成果物として同じウェイトで大切なことを強調することにしている。納期に追
われた仕事を続けていると、つい、プログラム開発にばかり気をとられてドキュメント

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を作るのが後回しになりがちである。なかにはお客さまが要求していないドキュメント
は、作る必要がないと明言する人もいる。会社で規定したドキュメントがなぜ必要なの
かを理解しない限り、真の理解にはならない。
 ISO9001の本来の意味は、認証された組織単位で、誰が製造しても同じ品質を
保証できるものでなければならないことにある。そのために、作業標準を作り全員がこ
れを守ることによって品質が一定に保たれる。これを国際基準として制定したものに照
らし合わせて合格したものがISO9001の認証取得なのである。従って、会社で作
業標準として規定したドキュメントを不必要だと否定する作業者がいたら、認証取得そ
のものが怪しくなってしまう。不必要なものは最初から規定の中に入れてはならない。
 自転車操業のような仕事はどこかで打ち切らなければ、現在、社員が持っている矛盾
はどこまでも尾を引くであろう。