アカシア便り92           '99-03-14      1/2

 中国では、結婚式や正月などお祝いの時に爆竹をならして雰囲気を盛り上げる習慣
がある。北京や上海などの大都市では、耳をつんざく爆竹の音と浪費を戒めるためか、
伝統的なこの行事を条例によって禁止してしまった。ところが、大連にはこの習慣が残っ
ており、春節(旧正月で今年は2/16)と元宵節(旧暦1/15で今年は3/2)は街中、花火と
爆竹で大変な賑わいになる。
 今年の春節の花火大会は星海会展中心の大広場で、2/17〜23の1週間連続で
V99大連煙花爆竹迎春晩会Vの名の下に、盛大に大輪の花火が打ち上げられた。

 活動の内容は次のようなものである。

 V七星之光煙花爆竹燃放表演V ーー 花火大会
 V七星杯Vカラオケ大家唱比賽 ーー カラオケ大会
 V七星杯V撮影大賽      ーー 撮影大会
 V七星杯V彩灯展示会         ーー ランターン(彩灯)の展示会
 V七星杯V民間芸術大賽       ーー アマチュアの芸術大会
 V七星杯V書法大賽           ーー 書道大会
 華夏奇絶表演         ーー 奇術大会
 中外優秀電影展映             ーー 国内外の優秀映画会
 幽黙驚険電視片演映      ーー 恐怖テレビの上映会
 群衆性文体表演活動      ーー 参加者全員によるグループ活動
 模擬主持人活動        ーー 飛び入り司会者(主持人)活動
 迎春美食活動         ーー 種々雑多な屋台の食物屋活動
 等々

 V七星Vというのは、7日連続で星空のもとに繰り広げられる催しであることを意味
し、V比賽Vというのは優劣を競い合う大会で、V大賽Vは普通の大会のことである。
 このころの大連の気温は、夜は零下5度から10度くらいに冷え込むが、広場まで
行くと、屋内では昼間から屋台が立ち並び、丸ごとのいかのくし焼きや天津包子などを
頬張ったりして、飲みながら食べながらさまざまな催しに参加して楽しめる。まるで
大連中の人が総出で集まったかのように大勢の人出で賑わう。
 屋内で時のたつのも忘れて楽しんでいると、やがて、外でけたたましく鋭い爆竹の破
裂音とともに打ち上げ花火が上がりだし、夕方の6時になったことを知らせてくれる。
屋内の諸活動に参加していた人々は、雪崩を打ったように外に飛び出し、興奮覚めやら
ぬ面持ちで、美しく変化に富んだ大空の芸術に歓声を上げる。見とれているうちに、腹
が空いたら屋台にとって返して、飲み物と食物を仕込んで来る。
 しっかり防寒具を身につけた群衆は、寒さなどまるで感じないらしく喜々として時の
たつのを忘れ、語らい、笑い、全員、旧知の間柄のように親しみ楽しんでいる。

 私たちが、大連に戻ってきたのは2/20(土)だった。連日、夕方の6時頃から
9時過ぎまで大がかりな花火を鑑賞するつもりで戻ってきたのだが、私の24階の
マンションからは、東側に位置する市の中心部である市政府の         2/2
人民広場や大連湾方面は見通しがよいが、南西方向の星海湾方面は向かいのマンション
に遮られてわずかしか見ることができない。 音はすれども花火は見えずという状況で
あった。それでも時折、マンションの隙間から大輪の打ち上げ花火をかいま見て、手を
打って喜んでいた。

 これに比べると、元宵節は、花火の競演といった雰囲気であった。春節の大がかりな
花火大会とは違い、庶民が全員で思い思いに花火を打ち上げて楽しんでいる。あたかも、
街中で競争しているかのように、こちらで打ち上げたかと思うと、向こうの街角でそれ
に応えるように大輪の花火を打ち上げる。かと思えば、そこここの庶民が家族揃って
彩り鮮やかな花火を楽しんだり、高層マンションの窓からは竿のさきに爆竹を結わえて
パンッパンッーーーー鋭い破裂音を鳴らしたりしている。一般市民がこぞってこれほど
までに楽しく、愉快に過ごす元宵節を今まで見たことがない。もちろん、私の4棟ある
マンションの1画からも時ならぬ爆竹の破裂音が響き渡り、慌てて窓の下を覗き見たり
した。
 この日はちょうど6時前に会社から帰り、洋服を着替えるころに花火が始まった。
夕食の時間でもあったので、花火の競演を見るために、東側と南側にあるサンルームの
間をグラスを持ったまま、うろうろと行ったり来たりして、すばらしいその競演を楽し
んだ。遠くに近くに、美しい花火を観賞し、景気のよいポンポンという音を聞くので、
目と耳の両方から得られる相乗効果によって、こころも浮き立ち、身も弾むような快さ
に身を任せる軽い興奮に身を任せていた。このように庶民が手ずから楽しむ大がかりな
花火大会は、日本にはない習慣ではないだろうか。

 春節前日の2/15は大晦日であるが、中国ではV除夕之夜Vと言っている。この日
は出稼ぎの夫や父親、寮生活をしている子供たち全員が揃うので、夜を徹して餃子を
作り、食べながらV迎春晩会Vのテレビを見たり、トランプなどのゲームをしたりして
楽しむ。
 聞くところによると、春節当日の2/16はほとんどの家庭では家族だけで過ごし、
友人や親戚等お互いに訪問し合ったりすることはせず、翌日は、夫の両親を尋ねてお祝
いをし、3日目には、妻の実家を尋ねるのが一般の習慣だとのことである。4日目以降
に始めて友人、先輩、親戚等を尋ねて楽しむらしい。
 私たちは大連で5回目の春節を迎えたのだが、年に2回の長期休暇のためいずれも
日本に帰っていて、当地の春節は経験していない。中国人家庭の折角の一家団欒の春節
の訪問は遠慮した方がよいので、せめて、町中の雰囲気だけでも味わってみたいと思っ
ている。

 元宵節は、日本では小正月というが、中国では昔から白玉だんごの中にいろいろな
種類の甘いあんを入れて熱湯でゆで上げた元宵(イエンショウ-別名、円湯)というのを食べる習
慣がある。子供のころ、金州の片田舎で、夜ごと元宵売りが、イェンショ.イェンショ
ウ〜という独特の節回しで、アツアツのだんごを売りに来たのを憶えている。その声が
聞こえて来ると、どんぶりをもって寒い中を外に飛び出して行ったものである。