IBM囲碁部報15021: EGC2015参加報告記
高本さんより、ヨーロッパ囲碁コングレスの参加報告記が
送られてきましたので皆さんへお知らせします。
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第59回ヨーロッパ囲碁コングレスは2015年7月25日(土)-8月8日(土)
までチェコ共和国のリべレッツ市で開催された。
私はIBM囲碁仲間の兵藤さん、加藤(武)さん、関西在住の木村さん、
他に囲碁仲間2人、碁はしない私の家内と共に合計7名で、7月25日(土)から
7月31日(金)の1週間参加した。
チェコ共和国のリベレッツという街は首都プラハから東北へバスで1時間、
人口約10万人、市内に路面電車の走る中都市である。
冬は山頂にテレビ塔とホテルがそびえる標高1012メートルのイエースチュト山を
中心にスキーができるリゾート地でもある。
ヨーロッパ碁コングレスの会場は市の中心街にあるバビロンホテル、プールや遊園地
も備え、客室も1000室あるという巨大ホテルである。
私たちはそこに6泊した。
7月23日と24日は首都プラハに滞在、プラハ城、カレル橋、市庁前広場を観光、
24日夕食はモーツアルトという名のレストランで、2時間の室内楽を聴きながら、
ステーキやサーモン料理を楽しんだ。
お客は我々を含めてわずか14名、4人の室内楽士がモーツアルトやハイドンの名曲を
2時間も演奏してくれた。
因みに料金は一人当たり1600コルナ(8000円)だった。
7月25日(土)は参加登録をし、プログラム入りのバッグと名札を受け取り、
前夜祭を兼ねた夜の開会式に臨む。
今回チェコ大会は44ケ国、約900名の参加で過去最高、ヨーロッパへの囲碁普及は
プロ棋士の誕生もあり、急速に進んでいるようだ。
日本からは山城九段が指導棋士として招へいされている。参加人数は隣国ドイツが
192名、次いで日本108名、開催国のチェコが96名、フランス92名、
中国77名、驚いたのは韓国がわずか4名、韓国の経済情勢を反映しているのだろう。
EGC参加費は一人1週間参加で70ユーロ、日本を出発する前に振り込んだ。
参加費は60ユーロから100ユーロと幅があるが、申込直前は高く前年に申し込めば
安いと合理的である。
今回はAGA(American Go Association)ルールを適用するということで、
開会式の後、日本人を集めたAGAルールの説明があった。
今後、国際囲碁大会はこの方式が採用されると考えられるので、
AGAルールを別紙にまとめておく。
ヨーロッパ碁コングレスには加藤さんが5段、木村さんと、私が4段、兵藤さんは
2段とIBM段より、3段落として申請した。
ヨーロッパ碁コングレスでは段級はさほど重要ではない。
それより、マクマホンスコアといって過去の成績を反映して対局ごとに点数が変動し、
点数により、参加者全員が順位付けされる。
私の序列は1回戦開始前66位、今回の成績1勝4敗で、5回戦終了後は96位で
順位を30位下げてしまった。
出場したメイントーナメントは1日1局で持ち時間各2時間半、初日は開始時刻が
11時すぎとなったが、2日目からは9時半、日本では持ち時間はほとんど40分、
2時間半は長すぎる。
私のメイントーナメントの成績結果は次のとおりであった。
1回戦 33番テーブル 黒 高本(日本) 白 Omelea Johaus(イスラエル)
白22目半勝ち
2回戦 38番テーブル 黒 高本(日本) 白 東海林忠雄(日本)
白2目半勝ち
3回戦 42番テーブル 黒 Welter Marlon(ドイツ) 白 高本(日本)
黒 15目半勝ち
4回戦 45番テーブル 黒 Kachanovsky Mykallo(ウクライナ)白 高本(日本)
白 4目半勝ち
5回戦 44番テーブル 黒 Poltronieri Bruno(イギリス) 白 高本(日本)
黒 17目半勝ち
1回戦の相手イスラエルの青年は日本で8ケ月院生修業をした、私から見れば強豪。
貴重な1勝を挙げることができた4回戦の相手はそれまで3連勝しているウクライナ
の青年。対局前、わざわざ兵藤さんが私のところまで来て、5年前にキエフで彼と
対局したという。彼の弟がアーテムといいウクライナチャンピオンと紹介してくれ、
話が弾んだ。
私は約20年前にウクライナで仕事をした経験があり、囲碁友達のユーリプリュセチ
の話などした。弟はウクライナで最も強いアーテム7段でプロ棋士となったロシアの
イリアとトップテーブルで戦っていると話してくれた。
父親も級レベルながらこの大会に参加していると紹介してくれた。皮肉にもこの青年に
だけは白番コミがかりで勝つことができた。
家内も5年前ウクライナキエフを訪れており、再会を果たすなどなごやかに、
交流していた。5年前訪れたウイーンのクリスチャン夫妻、来年開催予定の
ロシアサンクトぺテルブルグの囲碁協会長のウラジミルさんやロシア女流チャンピオン
のナターシャさんにも再会した。
対局場はテーブル1-40が小じんまりとしたCongress Hall で静かに対局する
ことができたが、2連敗したため3回戦以降Expo Hallという大部屋に移された。
5局とも布石で優位に立った。優勢を意識すると妥協する、相手は2時間半の
考慮時間を使い、打ち過ぎではないかと思うほどがんばってくる。
しかし、打ち過ぎでないか読みきれない。日本人相手の場合、私はヨセが得意だが、
ヨセでもねばりにねばって来られて最後には大差負けになってしまった。
投げないで終局の手続きになれるためすべて作り碁にした。 油断も多かったが、
勝負の厳しさを欧州の青年に学ばされた。
7月29日は水曜日でメイントーナメントはお休み、加藤さんと私ども夫婦3人は
市内観光にでかけた。リべレッツ市のシンボルともいえるイエースチュト山へ山頂まで
タクシーで登り、広大なボヘミア平原を眺めロープウエイで下り、路面電車の駅まで、
山路を下り、路面電車でリベレッツ動物園へ行きホワイトタイガーを見て市内観光を
楽しんだ。交通費も、食事代も安い。因みにトラムと呼ぶ路面電車は100円、昼食は
サンドイッチとビールを飲んで、500円ほどであった。物価が安い割には住宅は立派
である。おみやげはボヘミアンガラス製品が多かった。
日本は酷暑との情報、チェコは涼しく食事も美味く快適な旅を続けることができた。
2015年8月10日 記 高本 正
別紙 「EGC2015で採用されたAGAルールと終局の手続き」
AGAルール
中国ルールを採用する
コミ7目半
最後までダメを詰め会う
隅の曲がり4目は実戦解決
終局し勝敗判定は中国方式と日本方式どちらでもよい。
中国式(Area): 地と盤上に生存する自分の石の数の合計
日本式(Territory): 地のみ
どちらにするかは対局前に対局者同士で合意する必要がある
一致しない場合、判定の簡略な日本式を採用する。
日本式勝敗判定(地の計算)のため次の手続きをとる。(互先)
白が最後のダメをつめた場合、双方のパスで終局となる
黒は着手放棄(パス)を宣言する 黒石を1個アゲハマとして
相手に与える
白も着手放棄(パス)を宣言し、白石を1個アゲハマとして
相手に与える。
黒が最後のダメを詰めた場合、以下3回のパスで終局となる。
白は着手放棄(パス)を宣言し、白石を1個アゲハマとして
相手に与える。
黒は着手放棄(パス)を宣言し、黒石を1個アゲハマとして
相手に与える
白は2回目の着手放棄(パス)を宣言し、白石を1個アゲハマ
として相手に与える。
(私見)
1.中国ルールの採用
AGAは囲碁国際ルールを確立するうえで、中国ルールと日本ルールの微妙な違いが
あり、ルールとしては曖昧さの少ない中国ルールを採用すべきであると判断したと
思われる。
今回EGCもAGAルールを採用したことはAGAルールが今後の
国際囲碁大会の潮流であると思われるので、日本人もAGAルールに慣れ
て行く必要がある。日本ルールではダメは最後まで詰めない優雅さがあるが、
国際ルールとして中国ルールが主流となることを重んじ、棋道として礼節を
尊び、エチケットも大切にする日本流を根底に持っていなければならない。
2.勝敗判定計算方法の中国式と日本式
地の大きさのみで勝敗を判定する日本方式(Territory)を簡略でよいと判断して
いるようだ。中国ルールで最後までダメを詰めることは省略できないので、2回パス、
または3回パスで終局とする手続きを考えついたようである。
中国ルール、互い先の場合最後にダメを詰めたのが黒の場合、1目有利になるので、
黒1回のパスに対し、白は2回パスすることで、白が1個多いアゲハマを黒に与えて
白の地を1目減らすということで、整合性をとるようにしたのである。
囲碁大会用語
参加登録 registration
対戦相手発表 pairing
先番 black
白番 white
対局結果 result
地のみで勝敗を判定する 日本方式 territory
地と盤上生存する自石の数の総数で判定する中国方式 Area
対局後の順位 standing
最終順位表 wallist
ランキングに基本となるもの Macmahon Score
以上
IBM Japan IGO Club